子ども達が自立した。定年退職をした。独り身になった。事業から身を引いた… など、”第二の人生”が始まる理由は人それぞれ。今回紹介するプラスデザイン一級建築士事務所が手掛けた住宅も、クライアントの第二の人生を快適にすごす終の棲家としての計画でした。木の暖かさに包まれた平屋建築というこちらの家、いったいどのような住宅なのでしょうか。さっそく見ていきましょう。
連続性のある屋根と壁、規則的に並ぶ大きなガラスの開口部が印象的でモダンな外観です。平屋建てならではのどっしりと地に構えた安定感のある佇まいですが、開口部が多い開放的な造りなので視線が抜け、軽やかで爽やかな印象もあります。設置された塀もまた然り。敢えて少しずつ隙間を残した木製の塀は、外からの視線を遮りつつも、重く閉ざされた印象にならず、家の雰囲気をフレンドリーで温かみのあるものにしています。見え隠れする庭の緑も家に魅力をプラスしています。
室内は垂木表し仕上げの天井が印象的な空間。木材の持つ温もりや、木造建築ならではの繊細な美しさを感じさせます。また垂木の流れが視線を導き視界に広がりを、そして全室にまたがって連続していることで室内空間にさらなる広がりを与えています。オーク材の床は、年輪を浮き上がらせるために木材の表面を丁寧に磨き削る”浮造(うづくり)仕上げ”となっています。そうすることで木目のでこぼこが引き立ち、自然の木の素材感を足の裏でも感じることができるのです。
大きなハイサイドライトが絵画のフレームのように空を美しく切り取ります。季節や時間によって様々に表情を変える空や流れる雲、そして星空を日々の中で身近に楽しむことができる空間では、自然の美しさと共に生きる情緒に溢れた日常生活を送ることが可能。また、仕上材に木材を多く使用したこと、表面に塗膜をつくらない自然塗料を使用したことなどにより、人工のエネルギーに頼らない自然の調湿効果が期待できます。ソファの背後にあるのは和室。障子の開閉により、広いLDKとしても個室としてもフレキシブルに使用できます。
傾斜のある屋根は南側を高く、そして深い庇を設置することで夏は強すぎる直射日光を遮りつつ、年中たっぷり日光を室内へ取り入れることができます。こちらの住宅の特徴のひとつが、この深い庇の他にハイサイドライトの下に小庇が設置されていること。通常小庇は小さな窓や出入り口の上に雨よけのためなどに設置されますが、こちらの住宅ではこの小庇によって太陽光を反射させ、天井面からの反射光を室内に取り込むライトシェルフを採用しています。そうすることで直射日光に含まれる熱を取り除いた間接光を、部屋の奥まで届けることができるのです。